PRGRのクラブにまつわる過去や、新製品開発に奮闘する現在、そして新しいクラブを世の中に生み出す未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!多くのアマチュアゴルファーの悩みを解消すべく、創業以来、研究開発を続けてきたプロギア。
ヘッドスピード40m/sの日本の平均的なゴルファーへ、最大飛距離をもたらす新しいドライバー”LS(エルエス)”を完成させたPRGR開発チーム。
が、ゴルフクラブはドライバーだけではありません。
キャリアゴルファーの苦悩
長い間ゴルフをやってきて、ゴルフの楽しさと同じくらい辛さ、苦しさを経験し悩みを抱えるゴルファー。そんなゴルファーをPRGRは、”キャリア(経験豊富な)ゴルファー”と呼んでいますが、キャリアゴルファーにとって、フェアウェイウッドの飛距離アップも叶えたい夢です。
そんな望みを叶えたのが、2020年発売のRSフェアウェイウッドでした。
ドライバー同様、ルール”ギリギリ”の高初速設計で飛距離アップを可能とし、
ソールの”スラッシュグルーブ(特許出願中)”は、フェース下部に当たったボールでも初速を落とさず球を上げるてくれるので、多くのゴルファーから高い評価を得ました。
が、そんなRSフェアウェイウッドをもってしても、悩めるキャリアゴルファーは存在します。
キャリアゴルファー 『フェアウェイウッド難しい、苦手!』
キャリアゴルファー 『スプーン難しい!球があがらない!!』
キャリアゴルファー 『あかん!池やー!!』
キャリアゴルファーの悲鳴が日本中のゴルフ場から聞こえてきます。
ゴルフ場に仕掛けられた罠は容赦無くキャリアゴルファーを襲い、フェアウェイウッド、特にスプーン(3番ウッド)を難しいクラブとして認識させ、世の中で話題の”飛ぶスプーン”を手に入れても、ゴルフ場での使用機会はほとんどありません。
- 試打データだと210ヤード飛んでいたはずのスプーンが、コースで使うと170ヤードのバンカーにつかまってしまう。
- 3番ウッドは球が上がらないから、何とか上げようとして逆にチョロっちゃう。
- 結局、3番ウッドより、5番ウッドのほうがやさしいし飛ぶ。
そんなヘッドスピード40m/s前後のキャリアゴルファーは以外と多いのかもしれません。
フェアウェイウッドの弾道解析
横浜ゴム平塚製造所 PRGR事業所
キャリアゴルファーの悲痛な叫びを受け、PRGR開発スタッフはサイエンス・フィット等で収集した膨大な量のゴルファーのデータを解析します。
これらのデータを使って、最適弾道条件(打ち出し角・スピン量)を設定し、ヘッドスピード別に弾道をシミュレーションしてみると。
開発スタッフ 『ヘッドスピード40m/s以下のゴルファーのボール初速だと、球が上がりきらなくてキャリーが伸びていない。』
”初速アップ”をテーマにフェアウェイウッドの開発に取り組んできた開発チームですが、その方向性に疑問を持ちます。アスリートゴルファーに最高の結果をもたらすRSフェアウェイウッドが、キャリアゴルファーに必ずしも同じような結果を得られるとは限らなかったのです。
ちなみに、ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーに3番ウッドと5番ウッドを打ち比べてもらうと、、、
キャリー(滞空距離)は5番ウッドのほうが出ています。ランで距離を稼ぐ3番ウッドは、実際のゴルフ場では着地地点の状況(バンカー、池、傾斜、ラフ、雨)によって大きく距離をロスしていたのです。
開発スタッフ 『ヘッドスピード40m/sのゴルファーに必要なのは、、、打ち出し角だ!』
目指すべき道が見えてきました。
フェアウェイウッドにもHigh Launchを
ボール初速の最大化を狙ったフェアウェイウッドの試作品。フェース面積を広げたモデルですが、ディープフェースのためキャリアゴルファーには球が上げづらい。
しかし、ソールに設けられた”スラッシュグルーブ”の下打点への強さは、キャリアゴルファーにも有効です。
ドライバー同様、重心を深く、低くする”D.B.ソール”を搭載したフェアウェイウッドを試作するも、ソールのふくらみが邪魔して打ちづらく、さらに重心が深すぎてボールの手前をダフってしまいます。
ここで、フェアウェイウッド作りには定評のあるPRGR開発チームは過去の知見を遡り、打ちやすさと飛距離のバランスに優れ、大ヒットした過去のフェアウェイウッドの設計を洗い出します。それが、
2003年に発売したDUO HIT(デュオ・ヒット)です。
重心を深くしすぎず低くするために、ヘッドのクラウン部分にカーボン(CFRP)を採用した画期的なモデルで、3+(13度)から11番(26度)まで7つの番手をラインアップ。ちなみにそのなかでも人気があった番手は4番(16.5度)と7番(20度)でした。
打ちやすさと飛距離のバランスに優れたフェアウェイウッドの開発。この目標達成に向け、開発チームは走り続けます。
ドライバーと違ってフェアウェイウッドはヘッドサイズが小さいので設計自由度が低く、番手構成も多い。
たくさんの試作モデルを製作し、目標性能の達成を目指します。
フェアウェイウッドはゴルフ場での実打性能が非常に重要なため、現場でのラウンドテストを繰り返します。
こうして様々な試行錯誤を繰り返し、遂に開発チームは答えを出します。
フェアウェイウッドでも”ルールギリギリ”の高初速を実現するために、CNCミルド加工で限界まで薄くした高強度マレージング製フェースと、重心を下げるためのカーボン製クラウン、そしてソールには”スラッシュグルーブ”を採用して下打点での反発をアップさせ、V字型ソール形状で芝からの抜けのよさを実現。
さらに打ち出しアップのために、ある決断をします。
番手は、3番と5番のみ。そして3番ウッドのロフトを16.5度に、5番ウッドのロフトを20度に設定します。
開発スタッフ 『ヘッドスピード40m/sで十分な打ち出し角を出すには、ハイロフト設計が一番効果的だ!』
多くの番手をラインアップすることは、番手を選択する楽しさとともに番手選びの悩みを生むということを、多くの試打テストで経験した企画開発スタッフ。
そこでフェアウェイウッドのラインアップをシンプルに3番と5番のみとします。いみじくもこの番手のロフトは、DUO HITで最も人気のあった4番、7番と同じです。従来の4番、7番ウッドのロフトで3番、5番ウッド以上の飛距離を生み出す。DUO HITの時代には無かった高初速フェースだからこそできるロフト設計でした。
さらにフェアウェイウッドを3番と5番の2番手にしたことによって、ユーティリティは4番(23度)、5番(27度)をラインアップ。
これもフェアウェイウッド同様に高初速フェースを搭載した、“ギリギリ”設計です。従来のユーティリティよりヘッドサイズを大きく、フェアウェイウッドとのつながりをもたせた、やさしく狙えるクラブです。
昨今のフェアウェイウッド、ユーティリティは、それぞれがいかに飛ばすか。という部分に照準が当たっていましたが、そもそもゴルフは狙うスポーツ。セットの中で各番手の役割りをしっかり果たし、”飛ばして狙える。”がシリーズのコンセプトとしておぼろげながら見えてきました。
そこで開発チームはさらにもうひとつのチャレンジをします。
ワンスイングでシンプルスイング
キャリアゴルファーを集めて行われた最終サンプルのテストラウンド。
某ゴルフ場
キャリアゴルファー 『飛んでる!バンカー越えたよ。』
キャリアゴルファー 『楽にあがるなあ。』
キャリアゴルファー 『これはいいね!スプーンがこんなに簡単に打てたこと無いよっ!!』
女性ゴルファー 『うちやすい!たのしいー!!』
女性ゴルファー、キャリアゴルファーの感嘆の声。ボールが上がることがこれほどゴルフを楽にするのかと驚き、今までよりもゴルフを楽しくさせてくれます。
弾道データも、RSフェアウェイウッドに比べてあきらかに打ち出し角が上がり、キャリーが伸びていることがわかります。
フェアウェイウッドが上手く打てなくて苦しむキャリアゴルファーのお悩みを解消することができました。そしてフェアウェイウッドとユーティリティの番手間の飛距離ピッチも、均等に打ち分けられています。
3番ウッドだけ飛びすぎる。3番ウッドより5番ウッドのほうが飛ぶ。フェアウェイウッドとユーティリティーの飛距離差が大きい、フェアウェイウッドとユーティリティの飛距離差が無い。そんなキャリアゴルファーのセッティングの悩みをすっきり解消できました。
この打ちやすさを生んだ、もうひとつの秘密が、これ。
フェアウェイウッド、ユーティリティの各番手を同じ長さにしたのです。
この同一長さ(ワンレングス)設計はキャリアゴルファーの皆さんには伝えないでラウンドテストに協力いただいたのですが、ラウンド中に長さが同じだということに気付く人はいませんでした。
3番ウッドの打ちやすさに皆さん驚いていましたが、その理由は3番ウッドのクラブ長さが5番ウッドと同じ42.5インチだったからなのです。(ユーティリティは4番に合わせて40インチ)
ワンレングス設計にすると、5番ウッドのアドレスポジションで3番ウッドと5番ウッドが打てます。
ゴルフをよりシンプルにするワンレングス設計で、ゴルフをもっと楽しめる。フェアウェイから最も飛ばせて、最も難しいクラブである3番ウッドも、このフェアウェイウッドなら十分使いこなせます。
結果的に、
ドライバーから、フェアウェイウッド、ユーティリティまで、飛距離の階段(距離差)をしっかり作ることができました。
キャリアゴルファーにとってそれぞれ単品でも十分な機能を果たしながら、組み合わせるとさらに大きな効果が期待できる。経験豊富なゴルファーの今までのお悩みを解消し、ゴルフの楽しさを思い出していただく。そんなクラブシリーズがLS(エルエス)です。
ということで、開発チームの長年の苦労と努力の結果、2021年5月末にPRGR LSシリーズを発表。ただし、今回発表したクラブはLSシリーズだけではありません。次回からは、PRGR開発チームがアイアンの常識を打ち破りにいきます。お楽しみに。
つづく
*記事中の写真は一部イメージです
早く体験してみたい!
畦さんさん
コメントありがとうございます!6/10からレンタル受付開始、6/11からゴルフショップでの試打開始です。すいません、もう少々お待ちくださいませ(^_^)