ゴルファーの悩みを喜びに変えるため。新しいギア開発に挑戦するPRGR開発チームの姿を紹介するノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、ギアスト!。さて今回は、PRGR開発チームのお仕事についてご紹介したいと思います。と言っても販売促進を担当している私(N)はクラブ開発については完全に素人。とりあえず開発の現場に赴いて話を聞きたいと思います。
神奈川県 平塚市
ここは横浜ゴムの平塚製造所。私(N)は普段、東京新橋にあるPRGRの本社に勤めておりますので、ここに来ることはほとんどありません。
その広大な敷地の一角にあるPRGRの研究開発棟。
ここで出迎えてくれたのが、
PRGR商品開発部のF君です。
プロギアの営業部から開発部に異動となって1年あまり。今回はF君にクラブ開発のお仕事を紹介してもらいましょう。
F君 『この建屋にはプロギアの商品開発部門と品質管理部門、そして製造部門が入っています。』
PRGR本社には、体力自慢の営業部門やセンスの光るマーケティング部門などがありますが、ここ平塚事務所にはPRGRの頭脳が集積しているのです。
イベントカーの秘密基地
ちなみにPRGR平塚事業所にはこんなものもあります。
ゴルフショップでのフィッティングイベントで活躍するツアーバス、クラフトカーです。
クラブの組み立て工場としての機能も有するPRGR平塚事業所。フィッティングイベントでお客様のクラブをその場で組み立てる熟練のクラフトマンは、ここから全国に出動しているのです。
試作製作・データ収集
さあF君に建物の中を紹介してもらいましょう。ちなみにPRGR研究開発棟の中は企業秘密だらけ。ご紹介できるのは極一部となりますが、普段はめったに表に出ることは無い施設なので、この貴重な機会をどうぞお楽しみください。
まずF君が(肉体的に)重い足取りで階段を昇った先の部屋には、何やら大量の部材が保管されていました。
箱の中身は謎ですが、きれいに仕分けられ管理されています。
保管庫から移動したF君は、東京スカイツリーの1/10000のミニチュア模型ようなものの先端にクラブヘッドを乗せています。
F君 『これは重心位置を測定しているのです。試作品や製品サンプルなどをここで検品し、設計通りの数値が獲得できているかを確認しています。』
そしてカートリッジシャフトを装着し、ロフト、ライ角を確認。
次回の試打テストで性能評価をおこなうための準備をしていたようです。
続いてアイアンを組み上げるF君。
見た目に反して器用に手際良くクラブを組み上げています。昔からゴルフクラブ大好き人間だったF君にとっては胸踊る楽しい時間のようです。
手元にはきれいに仕分けされた接着剤、スペーサーが。
そして使用する工具もアイテム毎に置く場所が決まっており、散乱することはありません。
F君の姿を見ればお気付きの通り、ここは工場内ですので安全第一。整理整頓は安全衛生の一丁目一番地です。以前の大雑把なF君とは思えないくらい、几帳面なF君に生まれ変わっていました。
実証・検証・現場主義
続いてF君が向かったのは、
建屋内にある試打解析室です。
打席の横にセットされている赤い機械に見覚えがある方も多いかと思います。そうですスイング解析ティーチングメソッド、PRGRサイエンス・フィットでもおなじみの弾道・スイング測定器REDEYES ROBO(レッドアイズ・ロボ)です。PRGR直営店をはじめ、全国100店舗以上のゴルフショップに設置されているREDEYES ROBOですが、全国で計測されたゴルファーのデータはここに集約され、その膨大な数のショットデータがクラブ開発にも活かされているのです。
■PRGRフィッティングマイスターズショップ(REDEYES ROBO設置店)はこちら
ちなみに隣の打席は、周囲をネットとビニールカーテンで覆われています。
この打席は???
F君 『試打ロボットの専用打席です。』
なるほど、この打席にもREDEYES ROBOは設置されており、ロボットのショットによるクラブやボールの性能評価をおこなっているとのことです。ちなみにこれだけだとロボットマシンっぽくないですね。ちょっと打ってもらいましょう。
F君 『すぐには動かせません。精密で繊細な機械なので、使用するときは前日から調整を行う必要があるんです。』
ロボットは同一スピードで、寸分違わぬ打点位置でボールを打つことは非常に得意なのですが、狙ったスピードを出すためにマシンの微調整をおこなう必要があるようです。さらに使用するボールも温度差によるバラつきを抑えるために20℃に保たれた保温器に8時間以上入れたものを使うという手の込みよう。正確なデータを収集するためには、妥協を許さない事前準備が必要なのです。
また、事故を起こしたくても起きないような仕組み(ロボットの近くに人がいると作動しないなど)を導入するなど、徹底した安全管理をおこなっているため、急にロボットを作動させることはできません。
※ロボットテスト時にはヘルメットを着用。(イメージです)
その打席のさらに奥のスペースには、業務用冷蔵庫を2台くらい繋げたような巨大な機械を発見。
これは何でしょう?
F君 『これは、、、(言っていいのかなあ)』
いいよいいよ、言っちゃってよ。
F君 『ヘッド反発試験機です。ヘッドの反発係数を調べる機械です。』
おお!これが反発係数を調べる機械か。(横に書いてあるけど)
この試験機の中にフェース面をロフト0度にしてヘッド置き、指定のボールを規定のスピードでヘッドに向けて射出。フェース面の重心点にボールをぶつけて跳ね返ったボールスピードを測定し、衝突前後の速度比、すなわち反発係数(COR)を調べます。
フェースのトランポリン効果の上限は世界のゴルフルールを司るR&A※により定められており、以前のSLE(Spring Like Effect)ルールでは、反発係数0.83を越えるとルール違反となっていましたので、この測定器で試作ヘッドの反発係数を厳密に測定していたのです。
※Royal and Ancient Golf Club of St Andrewsの略。(実際にルールを統括しているのはR&A内の組織のひとつであるR&A Rules limited)
ただし、このような巨大な計測器は世の中に何台もあるものでもありませんし、移動も容易ではありません。ということで、COR測定に代わる反発測定方法としてR&Aが導入したのがCT値。そしてCT値を測定するのがペンデュラム測定器です。
振り子(ペンデュラム)の先端に取り付けられた金属球をフェースにぶつけ、その接触時間(CT:Characteristic Time)を測定することによりフェースの反発を測定する機械です。
接触時間が長いほどフェースの反発が強く、反発係数(COR)とCT値はある程度の相関があるため、現在ではCOR測定に代わってCT値で判定されています※。なおCT値の場合、ルール適合は239μs(microsecond:100万分の1秒)までで、誤差範囲+18μsを加えた257μsを超えるとSLEルール不適合となります。(ここらへんの話はPRGRスタッフはみんなずいぶんと勉強させていただきました)
※一部アイテムはCORでも判定
さらにPRGR開発チームはCT値を簡易的に測定するオリジナルの測定器を開発し、ルール”ギリギリ”に設計したモデルの量産品は全品検査を実施しています。
なぜここまで細かく反発にこだわるのか。もちろん反発力が高いと飛距離につながるので、少しでも反発を高めたいし、ルールを越えないために厳密な管理が必要だからです。(ここらへんの拘りはまた別の機会に)
クラブ開発というお仕事
さて次にF君がやってきたのは、
事務所の自分のデスクです。ようやくひと息つくのかと思いきや、パソコン画面に向かって何やら打ち込み始めました。
何をやっているのでしょうか。
F君 『試作品の重心データをまとめています。目標性能を獲得するためにどのような重心設計が効果的かインプットしています。』
真剣な表情でパソコンに向き合い黙々と作業するF君。ここで新商品が出来上がるまでを超カンタンに教えてもらいましょう。
F君 『まず商品企画チームが様々なゴルファーのニーズや傾向などをもとに、クラブの”コンセプト作り”をおこないます。我々開発には基礎研究チームとギア開発チームがありますので、研究データの中から新商品のコンセプトに使えそうな素材、生産技術等を持ち寄り設計をおこないます。そうして試作製作、テストを繰り返し、目標とする性能を得られたものを商品とすべく、生産工場と量産に向けた取り組みをスタートさせます。』
ずいぶん簡単に説明してくれましたが、ゴルファーの願いをカタチにし現実のものとする大変なお仕事のようで、企画開始から発売までは数年を要するプロジェクトとなります。
ちなみに今取り組んでいるクラブはどんなものなのでしょうか?
F君 『具体的にはまだお話できませんが、多くのゴルファーに喜んでいただけるクラブだと思います。』
この場所から次はどんなクラブが生み出されるのでしょうか?F君をはじめとする開発チームはゴルファーに喜んでいただくことを想像しながら、今日もクラブ開発を続けます。PRGRクラブ開発物語、ギアスト!では、NEWギアが誕生するまでの様子なども順次レポートしていきたいと思います。お楽しみに!
つづく
F君の姿をたっぷり見られて良かったです。^^)
パット下手さん
コメントありがとうございます!サイエンスフィット日記ではなかなか見られないF君の勇姿が、こちらではたっぷり見られると思います。お楽しみに(^_^)
Fくん ファイトー。勉強になります!
(深い意味は無いです)
千葉のクマさん
コメントありがとうございます!声援をいただきF君も喜んでおります。引き続きよろしくお願いいたします(^_^)
開発の流れ勉強になりました。
飛んで曲がらないドライバーの開発。ヨロシク!!
ボギーペースさん
コメントありがとうございます!飛んで曲がらないドライバー、いいですね!!F君にお願いしておきます(^_^)