PRGRのクラブにまつわる過去や、新製品開発に奮闘するスタッフの現在、そして新しいクラブを世の中に生み出す未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!
平均的な日本人のヘッドスピード40m/s。このヘッドスピードのゴルファーが最大飛距離を出せるドライバーの開発に取り掛かるPRGR開発チーム。様々な検証の結果、理想的な弾道条件は”打ち出し角18度、バックスピン2000回転”であるという結論に達し、新しいドライバーの開発目標はこの弾道条件の達成と定めます。
※従来の最適弾道(打ち出し角15度、バックスピン量2500回転)より、さらに打ち出しを上げ、スピンを抑えればプラス10ヤードを実現できる
しかし、、、
二律背反への挑戦
一般的にドライバーの打ち出し角は10~14度。打ち出し角を18度まであげるのは並大抵のことではありません。
しかし打ち出し角のアップを実現しないと、実際のゴルフ場ではバンカーや木などにつかまり、傾斜や雨で大きく飛距離をロスし、池やOBを越えられずに悩んでいるゴルファーを救えません。
そして、もし打ち出しをアップすることができてもスピン量がそれに比例して増加してしまえば、風の影響を受けやすくなるし、伸びのあるキャリーを得られません。打ち出し角をもっとアップしながら、スピン量を減少させる。この二律背反にPRGR開発チームは挑みます。
ちなみに。
東京 銀座
この理想弾道をスイングで達成できないものか。スイング解析とレッスンを複合させた科学的なゴルフ上達メソッド、PRGRサイエンス・フィットでインストラクターに確認してみました。
サイエンスフィット・インストラクター 『いやいや、打ち出し角18度でスピン量2000回転をスイングで実現するのは難しいよ。フェースを立てながらかなりのアッパーブローで打たないといけないからね。』
実際に挑戦してみると、
やはり打ち出しを上げるのは難しい。ティーを最大限に高くしてみて、
打ち出しを上げてもスピンが増加してしまいます。
何度か挑戦してみて、何とか理想弾道に近いショットが打てても、
安定して打てるものではありません。引っかけるしプッシュアウトが出るし、手前をダフる。とにかく確率が悪いし、このスイングだとアイアンが当たらなくなるでしょう。
このようにゴルファーにとって非常に難易度が高い弾道を、”クラブの力で勝手に再現性高く実現させる”というのが、このクラブの開発テーマです。
まず開発チームは、ボールの打ち出しを上げるためにフェースをシャロー形状にします。そして過去リバースドライバーやDUOドライバーで培って来た、低重心設計のギア効果※1による高打ち出し、低スピンの弾道に再度チャレンジします。
※1 クラブフェースの重心点でない場所にボールが当たった場合、 クラブヘッドはよじれて回転し、二つの歯車(ギア)が回転するように ボールはクラブヘッドと反対方向に回転する現象。重心点の上部でヒットするとスピンが減少する傾向にある。
まずはシャローフェース形状の低重心ドライバーを製作。低スピン効果は得られるものの打ち出し角は思うような数値を得られません。ロフトをどんどん寝かせていくと狙った打ち出し角は実現できますが、同時にバックスピンが増加してしまいます。
開発スタッフ 『ロフトを立たせながら打ち出しを上げるには・・・』
勝手に高弾道
PRGRの過去のドライバーのなかには、重心を深く設計し打ち出し角を高めたモデルがいくつかありました。中でも2014年に発売したegg1(エッグワン)ドライバーは、最大級の深重心とロフト角7.5度、クラブ長さ46インチという突出した設計でアスリートゴルファーに強烈な飛びを提供しました。
重心が深いとインパクトに向けてフェースが上を向くのでストロングロフトでも球が上がる。この考えをヘッドスピード40m/sのゴルファーにも当てはめようとテストを重ねますが、ヘッドスピードが足りずストロングロフトだと球が上がりません。
重心を低くしようとしたら同時に重心は浅くなってしまい打ち出し角を上げられない。重心を深くしようとしたらフェース面上の重心は高くなってしまいバックスピン量が増加するという問題が開発チームを悩ませます。
※低重心を狙うと重心は浅くなる(青)、重心を深くするとフェース面の重心は高くなる(黄)。目指すのは低くて深い重心(赤)【イメージ】
素材、構造、形状での試作を続けますが、なかなか狙い通りの成果を得られません。
企画スタッフ、開発スタッフ、クラブデザイナーは打ち合わせを続けアイディアを絞り出しますが答えが出ません。そんなある日、
開発スタッフ 『こんな感じにウェイトを付けたらどうだろう?』
いかにヘッドの中で重心設計を施すかを考えていた開発チームですが、ソールの下にウェイトを貼り付けることを考案。これを”地下室ソール”と名づけ、早速形状サンプルを製作。これが芝の上から打つフェアウェイウッドだったらとても打てたものではありませんが、ティーアップするドライバーではこの形状は可能です。
CAD上で重心設計、打音解析などを行
※2 一般的なドライバーの重心高さ率は60%前後
これをさっそくヘッドスピード39m/sのゴルファーにゴルフ場で打ってもらうと、、、
パキィィーーン
驚くような打ち出しの高さで、ボールは青空へ高く伸びていきました。
開発スタッフ 『これだ!!このドライバーなら勝手に理想弾道が打てる!』
こうして、ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーのためのドライバーの商品化が決定し、2年後の2021年の発売に向けて本格的な量産開発がスタートしました。
ギリギリのギリギリへ
”地下室ソール”により高打ち出し、低スピンの理想弾道の実現に成功しましたが、これはまだまだ序章にすぎません。
PRGRのドライバーは常に限界に挑む、高初速の”ギリギリ”ドライバーでなければならないが、球を上げやすくするためにフェースをシャロー形状にしたため、ディープフェースのRSドライバーに比べて初速性能が出ずらいという問題点が出てきました。
RSドライバーを使用するようなヘッドスピードのあるアスリートゴルファーよりも、ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーはより飛距離アップを切実に願っています。そんなゴルファーへ、1ヤードでも飛距離を伸ばすためにPRGR開発チームの挑戦はまだまだ続きます。
つづく
*記事中の写真は一部イメージです
ヘッドスピード39m/sのこの方は、K君のライバルGさんでは・・・!?
けつかちさん
大正解です!!!素晴らしい、参りました。身長180センチを超える大男ながらヘッドスピードが無くてあまり飛ばない人でも、ボールを高く打ち出して飛距離アップできるようにするクラブです(^_^)
シャローフェイスのドライバーは、私は好きなんですが、
地下室ウェイト?
何か試作だからでしょうが、カッコ悪いなぁ(笑)
まぁ、その辺は上手くデザインしてくれるものと信じて待ちます。
ヤジキンさん
コメントありがとうございます!試作品って性能を重視するから、カッコ悪いんですよね~(ネーミング含めて)。これをゴルファーの心に刺さるようにデザインしていき、製品としていくのにも色々な苦労があるようです。ぜひお楽しみに(^_^)
2021年って今年じゃないですか。私の現在のエースドライバー(リョ○マ)と打ち比べたいです。【プロギアじゃなくてすいません】発売を楽しみに待っています。秋頃ですか?
ところで“まだまだ序章にすぎない”、“新たな問題点が出てきた”、諸問題が解決された2021年ニューモデルという理解でいいですよね。2022年にマイナーチェンジモデルが発売されちゃったりするとお金がいくらあっても足りないです^_^。
2021年はゴルフの鬼になるさん
コメントありがとうございます!そうです。今年です!ちなみに近々発表予定ですー!!ここに至るまでのもろもろの問題を解決していよいよ発表、発売。というところまでこぎつけました。時系列がわかりにくくてすいません。どうぞご期待くださいませ(^_^)
これだと地面に置いた時にフェースがかなり被ってしまうのでは?
ティーアップを高くして座りの悪さを無視する為に浮かせて構えないといけないと思うのですが、フェース側に軽量な下駄を履かせる等するのでしょうか?
豆腐の角さん
コメントありがとうございます!仰るとおり、このままだとアドレスしにくいドライバーが出来上がってしまいます。20年前に発売したドライバーがまさにこれで、大ブーイングを浴びましたので、その教訓を生かして気持ちよく構えられるドライバーに仕上げなければなりません。ご期待ください(^_^)